歩いたら休め

なんでこんな模様をしているのですか?

【社会シミュレーション】ソーシャルメディア上の意見形成についての論文のイントロダクションを翻訳してみました

AIP(米国物理学会)に面白い論文が投稿されていると聞いて読んでみています。

Opinion formation on social media: An empirical approach

 

「empirical approach」というタイトルですが、シミュレーションを用いた研究の利点欠点、文献などがとても参考になりそうだったので、要約とイントロダクションを翻訳してみました。ところどころ変な訳が見えますが気にしないでください。

 


 

 意見交換のモデル(opinion exchange models)は世論形成の過程を説明することを目的としており、社会システムの本質的なメカニズムを明らかにしようとするものである; しかしながら、そのモデルの結果は経験的に大規模な実データをめったに利用しない。オンラインのソーシャルメディアは意見の相互作用のおびただしい量のデータをもたらしたが、それらの意見モデルがソーシャルメディア上の意見形成を特徴づけるために適切かどうか、さらなる調査を必要としている。われわれは実際のソーシャルネットワーク、すなわちTwitterから相互作用の情報を大量に集め、現実の意見の発展を調査するために、様々なトピックに対するユーザーの動的な感情を分析した。われわれはそれらのデータから、2つの重要な結果を導いた。ひとつめは、しばしば世論はひとつの意見が優勢となる秩序だった構造に発展する、ただし完全な総意とはならないこと。ふたつめは、エージェント(agents)は彼らの意見を変えたがらず、個人が意見を変化させる回数の分布がべき乗則(power law)にしたがうことである。そこでわれわれは、エージェントが、彼らのアクティビティ(activity)に従って内部の意見を表明するために対外的な行動をとるモデルを提案する。逆に、個人の行動が彼らのアクティビティや隣人の意見に影響を与えることもありうる。一人のエージェントがその意見を変化させる可能性は、行動を起こした反対派のわずかに非線形に従っている。シミュレーションの結果は、このモデル上でのユーザーの行動パターンや世論の発展が経験的なデータと一致していることを示している。別の非線形パラメータを入れることで、この系は様々な事象(regime)にアプローチできるかもしれない。個人のアクティビティに大きな減衰を入れるとダイナミクスが遅くなり、しかし系の中でより秩序だった構造が現れる。

1.Introduction
 近年、多くの意見モデルが提案され、個人的な考え方から意見の相互作用をシミュレーションしてきた。個人が持つ相互作用のルールを与え、意見のダイナミクスの研究は、社会科学領域の大域的(global)で複雑な性質を理解することを目指している。[1,2] 統計的な手法は、局所的(local)なルールが社会的エージェントの集団行動に与える影響を調査するのに向いている。[3] これらのモデルの中で、エージェントはいくつかの可能な意見(個々の意見モデルに対応する[4-7])のひとつを持つか、エージェントの意見はある範囲の実数の値をとる(i.e. 連続的な意見のモデル [8,9])。ある意見の初期配置から始め、相互作用のルールに従ってエージェントが自分の意見を更新し、最終的にそのモデルによる世論の構造や相転移の条件を見つけようとする。離散的な意見のモデル、例えばIsing modelやSznajd model [10-12]は、固体物理学で用いられる強磁性体のスピンとのアナロジーを利用することが多い。意見モデル上で相互作用のルールが定義され、エージェントが強磁性のスピンのパターンに従って彼らの状態を更新し、物理システムのアナロジーによって社会システムを説明する。ほとんどのモデルでは、隣人による影響が不可欠な役割を果たしている。系の最終的な巨視的な状態は、意見が一致した状態や、分断化、分極した状態(plarization)になる可能性がある。二値の意見モデルの場合、意見の一致した状態は他人の模倣や隣人間の合意(compromises)の結果としてしばしばよく扱われるが、分極は他の離散モデル、例えば離散のベクトルモデル [13] や3つの意見による投票モデル [14] でも現れうる。加えて、仮想的もしくは現実の複雑ネットワークが、意見の相互作用の介在に利用されたこともある [15-17]。社会学上あるいは心理学上の特徴、例えば記憶 [18] 、慣性 [19,20] 、ノイズ [21] 、信念 [22]も意見のモデルに取り入れられており、それらは個人のふるまいや特定のシナリオにおける巨視的なダイナミクスを変える特性を示す。
 ますます現実の要素が意見モデルに取り入れられているとはいえ、そのモデルが現実の社会の意見形成を適切に描写し、社会現象を説明、あるいはさらに予言できるかどうかという問題については、未だにさらなる調査が必要である。Ref.23では、投票のセットである2003年のフィンランドでの選挙データが意見モデルを検証のため適用され、モデルによって作り出される一時的な意見の分析結果は現実のデータと一致していることが判明している。Ref.24の著者は、あるインターネットフォーラムでの政治的な議論を研究している。彼らは数百のポストやそれらの検出された感情を選んだ。その発展やネットワーク構造に注目し、彼らは参加者間の口論や個人的な対立が議論を促進することを証明した。彼らは議論の最終状態を確認し、意見の交換によって合意が形成されないことや意見が過激になる傾向があることを発見した。似た結果はRef.25でも現れている。これらの研究 [24,25] は、伝統的な意見モデルが意見の相互作用をうまく描写しているかどうか、そして相互作用のルールが現実の人間のふるまいの特徴を反映しているかどうかに疑問を投げかけている。これら僅かな研究を除き、データ収集の制限や処理能力のせいで、意見モデルの妥当性の大規模な実証的分析はめったに行われない。
 インターネットは情報を得るための最も重要な方法となった。人気のあるインターネットのアプリケーションサービスとして、オンラインソーシャルメディアは何百万人ものユーザーを集めた。ソーシャルメディア上では、ユーザーは他人と交流し、関係を築き、ポストや返信を公開し、議論をする。その結果として、ソーシャルネットワークの発展はユーザーたちの行動によって促進される。ソーシャルメディア上の意見形成のプロセスは現実の社会よりさらに入り組んでおり、情報はさらに早く減衰あるいは発展する。例えば、ユーザーはいつも匿名で問題を議論している。彼らは隣人の本当の名前を知らず、隣人の人格特性を詳しく知ることはできない。さらに言うと、ユーザーは隣人の内部の意見を直接知ることができないが、代わりに彼らの公開するポストを通じて彼らの意見を学習する。Refs. 26, 27では、連続的な意見と離散的な行動を持つモデルが提示されている; その調査結果によると、エージェントは隣人の行動を観察した後、他人に気づかれることのない彼ら自身の内部の意見を更新していることが示唆されている。このモデルはソーシャルメディアでの意見の発展を解釈する試みであるといえるかもしれない。
 ソーシャルメディアは膨大な数のユーザーや話題の情報をもたらした。Refs 28, 29の著者は、オンラインのソーシャルネットワークでの健康のふるまいの広がりの実証研究を行った。Refs 30, 31では、健康のふるまいの感情のダイナミクスは、大きなソーシャルネットワークから収集した現実のデータによって調査されている。ソーシャルメディアからであれば、ユーザーの関係性やポストを簡単に、自由に集めることができ、意見の発展プロセスを再現するために、そのポストの感情を分析することができる。この論文では、われわれは豊富なデータを有名なソーシャルメディア、すなわちTwitterから集め、ユーザーの意見をポストから獲得した。世論の発展を研究し、われわれは意見形成において従来の意見モデルとの相違を見つけ出した。この発見に基づいて、われわれは、個人の意見が潜在的で、エージェントの行動のみが他人に影響を与える離散的な意見モデルを提案する。個人の行動は彼ら自身のアクティビティによって引き起こされ、これが意見の発展の間に発達し、個人の意見は反対派の割合に基づいて非線形的に変化する。
 このペーパーの残りの部分は次のように構成されている。Section IIではTwitterでの意見の相互作用の実証的な解析を行う。Section IIIでは内部の意見と、個人のアクティビティに基づく外部の行動を用いたモデルを提示する。Section IVはシミュレーション結果を示し、モデルについての議論を行う。結論はSec Vで述べる。