歩いたら休め

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【メモ】Social Impact Theoryとコンピュータ・シミュレーション

 図書室でなんとなく社会心理学の本を読んでいたところ、いままでずっと気になっていた社会的インパクト理論 (Social Impact theory / SIT) についての記述があったのでメモしておきます。SITは時折社会シミュレーションの論文で述べられていたのですが、ちゃんと内容を理解していなかったのでありがたいです。

『第10章 集団の静的構造』、特に155ページから詳しく説明されています。

社会心理学

社会心理学

 
 わたしたちは社会生活を送るなかで,家族や学級,会社のメンバーや友だち,近隣の人びとといったいろいろな集団に関わって生きている.社会心理学における集団研究は,グループ・ダイナミクス(集団力学)と呼ばれる一部門を形成しており,数多くの研究が成されている.この章では,集団をどのように定義するか,集団はどのように形成されているか,集団ならではの現象はどういうものか,といった点について見ていく.

メモ

集団思考 (group think):普段は節度を持った人間でも、集団の中では集団に同調し、一緒になって極端な意見を主張すること。

集団極性化 (group polarization) :集団での討議を経て結論を出す場合は極端な答えが出やすく、以下の2つをまとめていう。

リスキー・シフト(極端に悪いような意見に偏る場合)

コーシャス・シフト(無難な意見に落ち着く場合)

 

社会的インパクト理論とコンピュータ・シミュレーション

ラタネ (Latané, B., 1981)は、個々人の相互作用の結果として集団全体に生じる心理学的な力 (Imp) を以下のように定式化した。

Imp = f (S, I ,N)

S : 影響力の強さ (strangth)

I : インパクトを与える側と受ける側の距離 (近接性, Immediacy)

N : 影響源の数 (Number of sources)

この関数は次のような性質をもつ

2倍の影響力を持つ人からは、2倍のインパクトを受ける。

  • インパクトは影響源との距離の2乗に反比例する。

距離が2倍離れていると、インパクトは1/4になる。

1人が1人に増えた時のインパクトの増加量は、100人が200人に増えた時のインパクトの増加量に比例する。

また、ターゲットが複数いる場合は、

  • ターゲット(影響を受ける人)が複数人いる場合、それぞれの人間に均等に影響力が分散する。

これにより、社会的手抜き (social loafing) が発生すると考えられる。

 

これらのSITの定式化を元にノバックら (Nowak, Szameji & Latané, 1990) がコンピュータシミュレーションをしたところ、集団全体における意見が多数派と少数派に別れ、圧倒的な多数派が存在すると同時に少数派も決してなくならないという結果が出、これにより集団極性化が生じたと結論づけた。

しかし、仮想社会を作るシミュレーション研究は結果の誤解を生みやすいとの指摘もあり (小杉・藤澤・水谷・岩盛, 2001)、慎重な議論が求められている。

 

考えたこと

インパクトは影響源との距離の2乗に反比例」って、単純に考えたら Ising model 的に最近接にのみ相互作用があるって近似でいいじゃんって思うんですが、その結果(なのかどうかは厳密に調べないと分かりませんが)「少数派も決してなくならない」という結果が出ているのは面白いです。

また、SIT自体が80年代の論文なので、最近の実証的研究で検証されているのか、SNSなど複雑ネットワークや遠距離相互作用の効果が入った場合ダイナミクスはどう変わるのか、といった研究もありそうな気がします。

Ising modelやSchelling modelとの関連は?とかいろいろ気になります。(雑なまとめ方)

他にも「集団の定義」とか、そもそも集団についてどう考えればいいの?という話もあり、その辺も詳しく考えたいな〜って思ってます。

また13章に社会ネットワークの話もあり、スモールワールド性などに触れられていましたが、個人的には真新しい情報はありませんでした。