歩いたら休め

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【メモ】「モデルと現実の関係をどう捉えるかという問題」について

最後の章にある「反省と一般的考察」が社会科学の分野にも言えそうで面白いです。

 おしまいに,一般にこのようなモデルを考える際に最も重要だ,モデルと現実の関係をどう捉えるかという問題について考えてみることにする.
 最近の物理(特に非線形平衡の分野)ではメタファー(暗喩)ということが強調されている.すなわち,モデルを現実のデータを定量的に説明するものとしてではなく,現象の本質を端的に表すおもちゃとして考えるという視点である.たとえば,はじめに述べたイジング模型なども,定量的な面もさることながら,相転移自発的対称性の破れの原型としての意義が大きいと考えられる.このような視点は,複雑な現象を理解するために有用であるが,一方では落とし穴もある.
 まず,メタファーというからには,十分普遍的で,かつトリビアルでないモデルである必要がある.イジング模型,パーコレーション,ロジスティック写像などにはその資格があるだろうが,一般にはその基準は大変厳しくなるように思われる.このような場合,本論文の研究にもいえることであるが,リアルなモデル作りをめざすのか,単純化をめざすのか,中途半端になりがちである.
 また,もっと本質的なことであるが,生物現象,社会現象で系の個別性,唯一性が問題になるような場合に,メタファーを用いることがどの程度役に立つかという疑問がある.
 筆者は,このような問題意識から,工学や統計学と統計物理の関連に興味を持つようにたった.これについては,いつか稿を改めて述べたい.

また、このような、モデルの定性的な性質を説明するための抽象的な(単純な)モデルを作った後、それを今後の研究にどう活用させればいいのかというのも悩みどころだと思います。個々の現実の現象を予測するために(=定量的なモデルを作るために)細かいパラメータを導入して調整するのか、現実の事象の様々な現象を単純なモデルで説明した上で「全体」を数理モデルの繋ぎあわせで説明しようとするのか、…その他の方針もいくらでも考えられそうです。

社会シミュレーションの話ではまず出てくる「Schellingの分居モデル」が、その後意外にもあまり発展していないのも、それ以上発展させる方針が見いだせないからかもしれません。