歩いたら休め

なんでこんな模様をしているのですか?

『ISISのDeplatformingから何を学んだか (What was learnt from deplatforming ISIS)』の抄訳

ここ数日で「トランプ大統領が不正選挙を強硬に主張して、支持者がアメリカ議会に乱入した」というニュースが話題になっています。その結果、「TwitterFacebookでアカウントを完全削除された」そうです。

シリコンバレー=白石武志】米ツイッターは8日、8800万人を超えるフォロワーを抱えるトランプ米大統領のアカウントを永久停止したと発表した。6日に首都ワシントンで発生した暴動後の同氏のツイートを精査した結果、さらなる暴力行為を扇動する危険性があると判断したという。同氏は情報発信のよりどころとしてきたツールを政権の末期に失う結果になった。

トランプ大統領の主張の是非はここでは議論しませんが、彼は今までTwitterなどのSNSで過激な主張を行って支持者を集めてきたことには異論がある方は少ないでしょう。アカウントが停止されたことで、更に極端な分断が生まれ、混乱が起こることは(何人かの友人がアメリカにいることもあって)心配です。また、私自身がインターネットやWEBサービスによって様々な違う立場の人と出会ってきた経験があるのですが、最近は逆にエコーチェンバー現象のように、異なる意見間で分断されているように感じています。

そんな折、Hacker Newsに「Twitter thread – What was learnt from deplatforming ISIS | Hacker News」という記事が上がっており、非常に興味深い内容だったので、抄訳とリンクを残しておきます。

news.ycombinator.com

これは、カナダの過激主義についての研究者であるAmarnath Amarasingam(Wikipedia)さんのツイート群です。専門的な英語が平気な方はthreadreaderapp.comにあるまとめを読むと良いでしょう。

  • トランプ大統領の事例によってdeplatformingが話題になっている
  • 過去6年間のISIS(※こちらもSNSを駆使して支持者を集めたことで有名)の研究が役に立つかもしれない

私はdeplatformingという用語を初めて知りました。「自分の意見を表明するためのプラットフォームの利用を阻止すること(To prevent someone from utilizing a platform to express their opinion)」という意味だそうです。

  • ISISのアカウントを停止したことの影響についての初期の研究として@intelwireとMorganの「The ISIS Twitter Consensus」がある
  • アカウントの停止後、強い信念のある(die-hard)支持者は新しいアカウントの作成に専念したが、他の人たちはアカウント作成のペースが停止のペースに比べて遅れているようだ

論文の全文は読めていませんが、Summaryを見る限り「過激派のアカウントを停止しても意味がないんじゃないかと主張されがちだが、うまくやれば効果がある」という内容のようです。

引用部分の翻訳。Deep-L Translatorを利用しています。そもそも研究者が入手できるデータに偏りがあることに触れられています。

率直に言って、研究者は、プラットフォーム対策の交絡効果のために、テロリストがどれだけのコンテンツをオンラインで投稿しているかを確実に測定することができません。研究者はテロリストが何を投稿したかを見ているのではありません。むしろ、研究者が見るのは、プラットフォーム対策が施された後に残されたものです。主要なプラットフォームの場合、これは通常、元々投稿されていたもののごく一部であり、オンライン上のテロリストのコンテンツに関するほぼすべての研究に根本的な偏りがあることを意味しています。

  • THE ALT-RIGHT TWITTER CENSUS: 極右(far-right)に特化した内容。アカウント停止後にGabなどの別のプラットフォームにユーザーが流れているらしい

Gabは言論の自由を謳うSNSのようです。他にもParlerというSNSもあるらしい。

www.j-cast.com

jp.wsj.com

  • Routing the Extreme Right: 削除ポリシーによってISISは目に見えるコミュニティがなくなったが、なぜ極右(Extreme Right)のコミュニティは消えないのかが述べられている

  • What Twitter Really Means for Islamic State Supporters: "オンラインコミュニティ"について述べられた著者自身の記事。強迫観念(obsession)と呼ぶほど問題意識を持っているらしい。具体的には「ISISのオンラインコミュニティに参加する人は、そこに感情的・社会的利益を感じている。それを理解して対策する必要がある」というような内容。
  • Wilayat Twitter and the Battle against Islamic State’s Twitter Jihad: 同様の問題について議論した記事
  • そしてこの内容は極右(far-right)でも当てはまり、「(アカウントを停止して)ネットワークを破壊するだけではなく、それが彼らにどのような影響を与え、彼らがどのように対応するかを考える必要がある」と主張している

  • ちょうどISISに対してのキャンペーン(アカウントの大規模削除?)の記事を出したばかりだ。極右(far-right)についても同様の分水嶺にいるのかもしれない。