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環境問題における少数者の影響過程―シミュレーション・ゲーミングによる実験的検証 (関西学院大学社会学部研究叢書)
- 作者: 野波寛
- 出版社/メーカー: 晃洋書房
- 発売日: 2001/05
- メディア: 単行本
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「環境問題における」と題されていますが、マイノリティ(少数者)の行動が、多数者や集団全体に与える影響について、包括的に取り上げられています。
少数者の影響(Minority Influence)またはマイノリティ・インフルエンスは「集団の中で逸脱した特異な行動をとる少数者が、多数者に属する個人の態度・行動を変容させる過程」についての研究。
第二章のはじめごろに、社会学や社会シミュレーションについて研究する際にも、考えておくべきだろう視点がありました。
Asch(1955)は知覚課題を用いて同調(conformity)について研究を行った。
それ以来、社会心理学においては「マイノリティはマジョリティから影響を受け、態度や行動を規定される存在」だと考えられてきた。
Moscovici(1976)はこれを「構造主義モデル」と総称し、この考え方では「社会的影響は社会統制のメカニズム」であり、社会的影響の機能は「既存の社会構造を維持すること」のみであった。
これを打破したのがMoscovici, Lage & Naffrechoux(1969)に始まるマイノリティ・インフルエンスの研究である。
Moscoviciは「変動発生モデル」を提起し、集団構造・社会構造が安定しているのは一時的なもので、それはある構造から次の構造へと変革が進む過程の一部でしかない。そこでは社会的影響とは、社会統制ではなく社会変化のメカニズムとして捉えられる。
マイノリティが革新を成し遂げた事例としてMoscoviciはガリレオの地動説やフロイトのリビドー説を挙げており、これらは当時の科学的通説から逸脱していたが、科学的なパラダイムシフトをもたらした。
このように集団規範からの逸脱は、構造主義モデルにおいてはネガティブな意味を付与されるが、変動発生モデルにおいては革新的で受容可能な行動とみなされる。こうした逸脱行為を率先して示す存在として、マイノリティの役割が重要視される。
完全な妄想ですが、社会的な構造が安定したり変化したりという過程は、準安定状態(Meta-stability)みたいに捉えられないかなあと思っています。
合意形成のダイナミクスは、強い相互作用によって平衡状態に向かう過程と、一方向的な社会的影響によって意見が複製され、ゆらぎが増幅する過程が重要になっている気がする(うまく対応付けられないだろうか)
— 黒めだか (@takeshi0406) January 13, 2015
社会を数理モデルとして考えるには、注目したい現象に「構造」と「変動」のどちらが強く影響しているのか考え、巨視的なダイナミクスが準安定状態に落ち着いていく過程を考えるか、変動によって準安定状態から外れていく過程を考えるか、みたいな方向性があるのかなあと思います。