最近、優秀な後輩が入ってきたり、同期が何人か辞めていったりしました。 いろいろと考えるところがあったので、今の自分が考えていることをメモしておきます。
「あらゆる仕事はおそらくいつか失敗する」
毎日一枚一枚カードをめくっていくと、いつかは悪い札に突き当たります。 仕事はいつか落とし穴にはまるし、現時点で最高のプログラムを書いても陳腐化するし、優秀な人はいつの間にかいなくなります。
大きな可能性に目を向けるのもいいですが、 逆に「この仕事で失敗するとしたらどこだろう」「何が起これば、自分の仕事が根本的に無駄になるだろう」と考えながら進めていくことも大事です。 誰の目から見ても失敗なのに、それが無駄ではないと正当化し、 同じところを何年もぐるぐると回り続けている人もいます。
むしろ、「今作っているものは多分糞コードだから、先輩に見てもらってぶっ壊してもらおう」と考えたほうが良いです。 素晴らしいレビュワーに見てもらえば、自分の持っていたアイデアの独りよがりな部分を直すことができ、階段を一歩昇ることができるはずです。 ネガティブな面を隠している間に、全体を見れば素晴らしいアイデアも、徐々に湿気を帯びて腐っていくだけです。
また、ネガティブな面を見ず、今自分がいる場所に満足している人は、 実は思考停止していて知らず知らずに他人に負担を押し付けているだけかもしれません。 悪い点に向き合い、少しずつ直してくほうがよっぽど前向きです。
よくわからないアイデアをありがたがるな
道具や考え方は、自分が使いこなせるようになってナンボです。 難しくて、その実自分が飲み込めていない言葉をありがたがってはいけません。
よいアイデアは、おそらくシンプルに内容を説明できるものであるはずです。 ただし、今の自分の能力不足で飲み込めないだけで、数カ月後に見るとそのアイデアが当たり前に見えるかもしれません。
素晴らしいアイデアに感銘を受ける場合も、必ず逆を取るようにしましょう。 そのアイデアの信奉者だけの声だけに耳を傾けるのではなく、それを批判している人がいないか見渡してみましょう。 場合によっては過度にシンプルに説明していたり、誤解を含む情報を発信していることもあるでしょう。
主張している人と、批判している人と、どちらの言い分が信頼できるか判断すればいいだけです。
思考パターンは道具に結びついている
人の考え方は、その人が普段使っている道具に縛られています。
例えば、プログラミングについて、 コンピューターサイエンティストは数値計算だと考えているだろうし、 Javascriptを使うデザイナーはHTMLの操作だと思っているかもしれません。 データの分析者は、プログラミングをデータの変換と可視化のプロセスだと答えるでしょう。
あるRubyのプログラマーが「書き方が変わると思考も変わる」という趣旨のことを言っていました。ただし、私はPythonのプログラマーでもあるので、書き方や見え方は違っても、本質的なただ一つのパターンがあるんじゃないかと考えるようにしています。
自分の持っている問題も、隣の分野(もしかすると隣の部署かもしれません)では、とっくの昔に解決しているものかもしれません。 ただ、自分の読んでいる名前と違う名前で呼ばれているだけで。
能力や技術は未熟でも、自分や別のコミュニティでは当たり前なものを見せるだけで、役に立つ、素晴らしいプロダクトが作れるかもしれません。 当たり前のものほど洗練されています。 ただし、きちんと説明して周囲を巻き込んでいくか、自分で作って見せることができさえすれば。
階段は一つずつしか昇れない
特にプログラマーの世界では、大魔法使いが華麗に物事を解決しているように見えます。 それに対し、様々な面で、自分自身が貧弱に見えることもあるでしょう。
しかし、彼らの使っている道具やアイデアは、全て必然性があって生まれてきたものです。 そのため、一つ一つ丁寧に勉強していけば、かならず同じものを使いこなせるようになると思っています。 その間に、彼らはもっと遠くに行っているかもしれませんが。
もしかすると、その道の方向を教えてくれる人に出会えれば、スムーズに同じ地点に立てるかもしれません。
投資する場所を間違えるな
人や技術には、今は未熟でもこれから上がるものと、今は華々しくてもピークを過ぎて下がるものがあります。 これから上がっていくものに時間や能力を投資していきましょう。
これから上がっていくものは、今は単純で、70%くらいの完成度で、周囲に注目もされていないものかもしれません。 しかし逆に言えば、習得がまだまだ楽で、上がって有名になっていく過程で複雑になっていっても、その都度勉強すればいいだけの話です。
逆に現時点で華々しいものは、既に洗練されていて、ライバルも多く、能力を活かす場所を見つけるのが難しいでしょう。 もし、完全にマスターしようと努力していても、その間に簡単に使えるインターフェイスをGoogleが用意してしまうかもしれません。
そのためには、継続的に外の世界から情報を取り入れる習慣を付ける必要があるでしょう。 これから上がるものは得てして未熟であるため、まだ周囲にピンと来てもらえないかもしれませんが、構うことはありません。
会社の中も一つの市場です。 その中で、上昇気流となりうる技術や場所を見つけることもできるかもしれません。
- 作者: 瀧本哲史
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