歩いたら休め

If the implementation is easy to explain, it may be a good idea.

【本】エンジニアが合理的にコミュニケーションしていくために

私は、データ分析を多く取り持つ部署で仕事をしています。そのため、普段関わりのない他の部署とやり取りする必要があったり、 最近では個人情報を取り扱う際には色々とお伺いを立てる必要があります。 システム化する際には技術に詳しい先輩に協力を仰ぐ必要もあります。

ということで、最近はいろいろな人とのやり取りが多く、自分のコミュニケーションがボトルネックとなってしまいつらい状態になっていました。 私は気分がふさぎ込むと本を読みふける習性があるので、友人やネット経由で知った本をいろいろ読んでました。

今回の記事はそんな中、次の2冊を読んで考え方が分かった、対策の打ち方が考えられるきっかけになった、という話です。

合理的なコミュニケーションのための『医療とコミュニケーション』

一冊目が『医療とコミュニケーション』という本です。医者と患者のコミュニケーションの話ですが、開発者とシステム利用者など、専門的な知識を持っている人と、知識を提供される人との関係に置き換えて読むことができます。

レジデント初期研修用資料 医療とコミュニケーションについて

レジデント初期研修用資料 医療とコミュニケーションについて

私は、こちらの紹介記事を介して知りました。こちらの記事自体も素晴らしいので、ぜひ読んでください。

medium.com

本書では、まずコミュニケーションの定義から始まります。それは端的に

「状況のコントロール」を達成するための技術

とされています。さらにそれは2つに分解され、

  • 事実に対して自分の見解を持つこと
  • 事実の改変を防ぐこと

となります。

どの章も学ぶことが多かったのですが、上の引用の2点の思想が一貫して感じられます。

私の上司も理性的な人なので、同じように「事実に基づいて議論してほしい」という趣旨のことを言います。私がいろいろと「大変だったからなんとかしてほしい」みたいな文句を言っているときも、「お前の言い分だと自分の印象しか言ってないじゃん。どこが悪いのかどんな事実をまとめておかないと、もし改善しようにもどこを直せばいいのかわかんないよ」と思っていたに違いありませんw

また、「これくらい困っている、という事実が共有できてれば、協力してあげられてたのに」ということもよく言われました。私は今のプロジェクトは1人で進めている時期が長かったので、不正確でも見積もりを立てる(見積もりは大抵不正確なものです)メリットが分からなかったのですが、上のような考え方だと「これくらいで終わると踏んでいる」というのを最初に合意しといて「これくらい遅れ気味だから助けてくれ」って言えばスムーズだったのかなと思います。

そして、私はコミュニケーションに苦手意識を持っていたのですが、「面白い話はしなくていい」という話にはちょっと救われました。「インターネット等の場では『動物を見た』話を『狼が襲ってくるぞ!』とセンセーショナルに伝える意見が多く共有されるけど、現実では合意形成ゲームだから、事実を伝えて信頼を積み上げていけばいい」という話です。

そういう意味で、私は給与交渉などの場での自己アピールも苦手に思っていた(自分には××なところが足りてないし…)のですが、「きちんと出た結果を記録しておいて、事実を事実として伝える」だけでいいんじゃないかと思うようになりました。幸い、私の上司はそうすればきちんと評価してくれる人だと思っています。

「『悪い人』は目的が決まっており、適切に対処すれば撤退してくれるからある意味付き合いやすい。『いい人』は目的がはっきりしないし、一方的に期待を積み上げてくるので交渉の余地がない」という話にも考えさせられました。

私自身、「できるだけ迷惑・負担をかけまい」という発想で八方美人になろうとして、交渉の場を自分で潰していた部分も大きかったと思います。

自分というメディアを高めるための『あなたの話はなぜ「通じない」のか』

もう一冊は、友人のマーケッターから薦められた『あなたの話はなぜ「通じない」のか』です。

マーケッターの彼は意識が高く、普段ヤバいレベルで働き続けているし、休日も「自分はこんな事やりたい」「こういうことやればうまくいくんじゃないか」と考え続けているヤバい人です。

あなたの話はなぜ「通じない」のか (ちくま文庫)

あなたの話はなぜ「通じない」のか (ちくま文庫)

Kindle版なら500円です。↑のリンクはアフィリエイトですw

特に印象的だったのが「自分のメディア力を高める」という言葉です。端的にいうと「外から見ると自分は他人から何をやってるのか分からないし、同じ言葉でも信頼のある人が言ってるものはやっぱり信頼されるよね」という話です。

私も先輩のアドバイスで、プロジェクトの早い段階で、簡単な、分かりやすいデモを作って見せていました。プログラムの難しい部分はできていないおもちゃのようなコードだったのですが、関係部署の方には意外にウケて、それ以来、ある意味自分というメディアを信頼してもらえ、社外とのミーティングに同席させてもらったり、いろいろな頼みを聞いてもらったり、仕事を進めやすくなったと感じています。

先輩からすると、「信頼されると次の話をしやすくなる」「他の人には意外に伝わらないので、ちゃんとイメージを伝えないといけない」ということを知っていたんだと思います。(もう一つ、「細かくアウトプットを出していかないとモチベーションが持たない」ということもあるんだと思います)

また、私の今の悩みとは直接関係ないですが、「問題の答えより、『問い』を立てて考えられたものかのほうが大事。それを広げるには『時間軸』『空間軸』『人の軸』を元に考えよう」という話も興味深かったです。技術に関しても、「こんなすごい技術があるよ!」というより「こういう問題があって、それを解決するために産まれた技術だよ」と説明される方が、個人的には覚えやすいと感じていたので。

また、「ピアノで賞を取った」という「点」の説明より、「10歳からピアノを勉強しており、高校のときは〜」と時間軸を入れた「線」の説明のほうが説得力があるという話も興味深かったです(そのため、この本は就活生にもよく読まれているそうです)。私は自分自身について「過去と今と未来にやってることに整合性がない」と感じている部分もあるので、個人的には痛い部分を突かれた気分になりました。

medtoolz著 『レジデント初期研修用資料 医療とコミュニケーションについて』 | 身近な一歩が社会を変える♪

「患者の立場になって聴く・話す」とか、共感的なコミュニケーションとか、そういう「ケア」に相当する部分。そういったことは、病院では、もしかしたら看護師さんの役割になるのかもしれない。(医師はどこまでもcureの立場の人だ。)

実はこの本にも、印象的なエピソードが出てきた。事故現場で亡くなった子どもの遺体を前にして、親御さんはその死を受け止められず、「あの子の顔の傷を何とかしてくれ」と叫び続けたと言う。しかし、看護師さんが亡くなった子どもの顔に絆創膏を貼ったら、親御さんは、そこで初めて子どもの死を受け入れられた―――とのこと(P.23)。

おそらく、「亡くなった子どもの顔に絆創膏を貼る」ようなコミュニケーションは、この本を百回読んでも実践できないだろう。

私も先程紹介した「医療とコミュニケーションについて」には『共感』という視点がどうしても欠けていたと思うのですが、こうすれば共感しやすい/されやすい、説得力があるよね、と考えるための側面は、もしかするとこちらの趣旨の本で補えるのかもしれません。

まとめ

私がコミュニケーション周りで苦労していて、なんとかやり方を考えなきゃヤバいので本を読んでがんばっている話をしました。

特に、『医療とコミュニケーション』の「事実を基に自分の意見を持って、誤解がないように伝える」ようなスタンスで一貫している点は自分にとって新鮮でした。一方で、身近にも似た考え方の人がいるし、WEBエンジニアでも医者でも悩みが変わんないなあという点にも勇気づけられました。

個人的には、エンジニアなら『SOFT SKILLS ソフトウェア開発者の人生マニュアル』の後に、給与交渉について考えるときに読むのが良いと思いますw

当然、本を数冊読んだだけで解決できれば誰も苦労してないはずなので、これからも似たようなことで悩み続けるとは思いますが、問題解決のための考え方の基は掴めたのかなと思います。というか、そもそも私は手を動かすのが遅いほうなので、そっちも(そっちのほうを)なんとかすべきなのかもしれません。