私のようにスマホで利用するSNSやゲームなどに常習的にハマっている方も多いと思います。ふとしたときにスマホを手にとって、自分の時間が思っていたより浪費されていることを自覚してしまう…。
ただ、現代では完全にテクノロジーを排除することは難しいです。うまい付き合い方を作り上げていく必要があると思って、日々試行錯誤していると思います。
友達の間で話題になっていた『僕らはそれに抵抗できない「依存症ビジネス」のつくられかた』がその観点でよくまとまっていて素晴らしい本でした。
内容の概要はこちらのブログがよくまとまっていたので、読んでみてください。私は詳しく紹介することはしません。
- 作者: アダム・オルター,上原裕美子
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2019/07/11
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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自分の"依存症"を自覚している人のために
依存症的な行動嗜癖の話は、自分自身を顧みても気になる点が多いです。特に繰り返し話に出る「ベッドの枕元に置いてついつい見てしまう」「ディスプレイの明るさによって寝不足になってしまう」っていうのは心当たりありますよね。
こうした仕組みは提供する側は分かっていて、アップル創業者のスティーブ・ジョブズが自分の子供にiPadを使わせなかったのを筆頭に、著名IT誌編集長やツイッター生みの親も自分の子供には「デバイスを与えない」「寝室への持ち込みを禁じる」などおしなべて厳しい規則を課している。
後半にはネット依存症をどう予防し、どう対抗してゆくかの対策も示される。問題解決の方法を身につけることを目標に更生施設で行われている解毒に向けた3フェーズ、注意をそらせる対象をつくり紛らわせる方法、デバイスを物理的に遠ざけた環境をデザインする方法、「いいね!」を隠すデバイス等々。専門的見地から見ればどれも理にかなっている。
「行動アーキテクチャ」という概念は象徴的だったと思います。意志力だけでは不十分で、自分の行動をデザインする必要があるという話です。本文から引用します。
だとすれば、最優先で導入すべき行動アーキテクチャの原則は、極めてシンプルだ。まずは、自分の精神的な生活に過剰なインパクトを与えている身近な存在は、それがなんであれ、物理的に遠ざけること。誘惑に囲まれていれば誘惑される。手の届く範囲から誘惑を取り除いて初めて、隠れていた意志力も探り出せるようになる。近くにあるという、その事実が猛威を振るうのだ。相手が人でも同じことで、近くにいる他人が友達となる。
私も、ひとまずスマートフォンはベッドから離れた場所で充電することにしました。
ゲームとの付き合い方について
ちょっと変わった読み方ですが、ゲームのデザインやゲーミフィケーションの話としても面白いです。人をハマらせる原則についても解説されているので、うまく使えば自分に良い習慣を身に着けさせるようハックする必要があります(もちろん、本質的な目標を外さないように気をつける必要はありますが)
かといって、ありがちなテクノロジー批判の本ではないのが、この本の面白いところ(特にゲームに対する著者の思い入れがハンパなくて、スーパーマリオについてかなり熱く語ってたり)。アル中ならアルコールと縁を切って生活するという道があるけれど(それが簡単とは言わないけれど)、デジタルと決別はできない現代において、どうウェルビーイングを確保するか、という話です。
ただ、目標の数字だけ追ってしまって、「自分自身の身体の調子を探る(対話する)ことを止めてしまい、走りすぎで疲労骨折してしまった人」などの例もありました。このあたりはマインドフルネスの考え方を思い出しました。また、「作り手の倫理」のような話にも何度か言及されます。
また、ゲームやテクノロジー分野だけでなくドラマや音楽も例示しているので、例を追っていくだけでもおもしろかったです。
例えば、ロックバンドのレディオヘッドが1997年夏にリリースした「カーマ・ポリス」。レディオヘッドの高度な音楽センスがはっきりと表れた作品だ。同じメロディを微妙に異なる2パターンで繰り返すので、聴いているうちに、どちらのバージョン聴いているのかわからなくなってくる。